寄生虫に関する検査・診断・治療および研究を専門とする研究室です

寄生虫検査について

・当教室で実施する寄生虫分子同定検査は、症例収集を目的とした研究目的のスクリーニング評価であり、診断を目的とした臨床検査ではありません。
・検査はすべて無料で実施いたしますが、サンプル送付の際には、個人情報を匿名化した症例サマリーを同時にメール添付いただくなど、情報提供にご協力いただきますようお願いいたします。
・検体提供に関する患者様へのご説明と同意につきましては、各施設での適切な対応をお願いします。
・PCRによる検査結果が陽性となった場合、この分子同定データの発表・出版等に関しましては、通常の共同研究と同様の取り扱いをお願いします。

★当教室では外来診療を実施しておりませんので一般の皆様から直接相談を受け付けることができません。寄生虫感染が疑われる場合には、お近くの医療機関にまずはご相談ください。

メール(医療関係者限定)
para@med.kanazawa-u.ac.jp

検体送付先
〒920-8640 金沢市宝町13-1
金沢大学医薬保健研究域医学系
寄生虫感染症制御学
所 正治

寄生虫の分子同定は、以下のAMED研究班の資金で実施されています。

分担研究者 所 正治
課題「遺伝子検出による網羅的寄生虫病診断システムの研究」

課題番号: 23fk0108639h0001
事業名:
(日本語)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業
(英 語)Research Program on Emerging and Re-emerging Infectious Diseases
研究開発課題名:
(日本語)わが国における熱帯病・寄生虫症の最適な診断治療体制の構築
(英 語)Development of optimal medical care network for the diagnosis and treatment of tropical and parasitic diseases in Japan
研究開発担当者 (日本語)国立大学法人宮崎大学医学部 教授 丸山 治彦
所属 役職 氏名: (英 語)National University Corporation University of Miyazaki,
       Professor, Haruhiko Maruyama
実施期間:令和4年4月1日~ 令和7年3月31日

検査検体と同定が可能な寄生虫の種

糞便検体

糞便検体から以下の寄生虫の検索が可能です。

[顕微鏡による形態学的な検出・同定]
MIF(Merthiolate-Iodine-Formaldehyde)法
□シスト・栄養型
・赤痢アメーバを含むアメーバ属
・ジアルジアを含む鞭毛虫類
・メニール鞭毛虫
・大腸バランチジウム
・ブラストシスチス
□オーシスト
シストイソスポーラ、サイクロスポーラ、サルコシスチス
□虫卵(回虫、鞭虫、鉤虫、吸虫、条虫など)
ショ糖浮遊法
□オーシスト
 クリプトスポリジウム
 シストイソスポーラ
 サイクロスポーラ
 サルコシスチス
培養法(田辺千葉培地)
□栄養型
 腸トリコモナス類
 レトルタモナス類
 ブラストシスチス

[糞便抽出DNAを用いたPCRによる検出・同定が可能な虫種]

□細胞内寄生原虫
・クリプトスポリジウム各種 Cryptosporidium spp.
・戦争シストイソスポーラ(旧:戦争イソスポーラ) Cystoisospora belli
・サイクロスポーラ Cyclospora cayetanensis
□アメーバ類 Entamoeba spp. and others
 赤痢アメーバ E. istolytica
 ディスパアメーバ E. dispar,
 モシュコフスキアメーバ E. moshkovskii
 ハルトマンアメーバ E. hartmanni
 大腸アメーバE. coli
 ポレックアメーバ E. polecki
 ヨードアメーバ Iodamoeba bütschlii
 小形アーバ Endolimax nana
□鞭毛虫類 flagellates
・ジアルジア(ランブル鞭毛虫)Giardia intestinalis (syn. G. lamblia, G. duodenalis )
・その他の鞭毛虫類
 ヒトエンテロモナス Enteromonas hominis
 腸レトルタモナス Retortamonas intestinalis
 メニール鞭毛虫 Chilomastix mesnili
□トリコモナス類各種 trichomonads
 腟トリコモナス Trichomonas vaginalis
 口腔トリコモナスTrichomonas tenax
 腸トリコモナスPentatrichomonas hominis,
 二核アメーバ Dientamoeba fragilis (トリコモナス類に再分類)
□繊毛虫類 ciliate
大腸バランチジウム Balantidium coli

[実験的なトライアル]
 微胞子虫 Microsporidia
 ブラストシスチス Blastocystis sp.
 歯肉アメーバ Entamoeba gingivalis
 などの検索も実施いたします。個別にご相談ください。

糞便サンプルの送付方法

・プラスチックのスクリューキャップ容器に小豆大(水様便であれば数ml)を採取してテープで密閉し、キムタオルなどの吸収材に包み、さらにジップロックなどの外袋で2重包装したものを輸送用の箱に収め冷蔵でお送りください。

★糞便検体の取り扱い注意点
・腸管寄生原虫の糞便検査では、原虫の便への排出が一定していないことから、サンプル採取のタイミングにより偽陰性となることが少なくありません。可能な限り異なるタイミングでの複数回の糞便検体の採取、送付をご検討ください。
・凍結サンプルでは、凍結融解による形態の崩壊で、濃縮・形態検出が困難になりますので、サンプルが凍結しないようご注意ください。



血液、骨髄・膿瘍穿刺液、角膜上皮掻爬物などを含む組織サンプル

  1. 血液サンプル・骨髄穿刺液・膿瘍穿刺液又はドレナージ排液は、薄層塗抹メタノール固定標本/数mlのサンプル(EDTA、ヘパリン添加も可)などがあれば、ギムザ染色による形態検査とDNA抽出による遺伝子スクリーニング検査が可能。角膜上皮掻爬物については、スクリューキャップチューブに封入して冷蔵もしくは室温で送付いただければ、不活化細菌添加アメーバ生食による培養検査とDNA抽出による遺伝子スクリーニング検査(遺伝子型同定)が可能。
  2. 生検サンプルについては、可能であればエタノール固定サンプルがDNA抽出には望ましいが、ホルマリン固定標本、パラフィ包埋切片、染色済みスライドグラスからも時に検出可能。
  3. これまでに、マラリア、トリパノソーマ、リーシュマニアの検出経験があります。
  4. 自由生活性アメーバでは、アカントアメーバ、バラムチア・マンドリラリスの検出経験があり、また、フォーラーネグレリア検出のためのPCRプライマーを準備しております。

トキソプラズマの検査について

  1. 髄液、末梢血、臍帯血、羊水などは1ml程度いただければ遠心沈渣もしくはバフィーコート部分からDNA精製、PCRスクリーニングが可能です。
  2. ヘパリン/EDTA添加は問題なく、遠心のため冷蔵が望ましいですが、凍結サンプルでも検査は可能です。
    胎盤組織は0.1-0.5g程度で十分です(こちらは凍結・冷蔵とも可)。
  3. 検体はスクリューキャップチューブにパラフィルムなどで封入していただき、吸収材(キムタオルなど)につつみ、ジップロックなどに入れる2重包装で、スチロールボックスなどに保冷剤とともに納めて、お送りください。


★トキソプラズマのPCR-シークエンス検査についての注意点
寄生虫検査では、陰性の結果が必ずしも虫体の不在を意味しません。
以下に検査結果の解釈における注意点をお示しいたします。

  1. PCRシークエンスによりトキソプラズマが検出されれば確定診断につながり有用ですが、結果が陰性となりましても、患者様にトキソプラズマが存在しないとはいいきれません。実際、繰り返しのPCR検査で、時に陽性になったり陰性になったりすることがあり得ます。これは、虫体血症の有無、組織内での潜伏状況あるいは活動性の違いなどで末梢血、髄液、胎盤、羊水などに遊離・侵入する虫体の有無が偶発的に変化するためです。

  2. トキソプラズマを対象としたPCR検査にはこのような問題があるため、症状・抗体価などで引き続きトキソプラズマ感染が疑われる場合には、トキソプラズマ症の可能性を除外せず一定期間をおいた繰り返しの評価(主に抗体と眼底検査が用いられます)により慎重にモニタリングを継続することが望ましいと考えられます。


組織内寄生虫断端の分子同定

組織切片標本に認められた虫体断端では以下の蠕虫の同定経験がある。
・イヌ糸状虫(Dirofilaria sp., Onchocerca sp.)
・アニサキス(Pseudoterranova decipiens, Anisakis pegreffii
・マンソン孤虫(マンソン裂頭条虫 Spirometra erinaceieuropaei
□検査材料には、10µm程度の厚みのパラフィン包埋切片4〜5枚のロールを使用し、精製DNAをテンプレートとしたユニバーサルPCR・シークエンスにより分子同定を実施可能。

★ユニバーサルプライマーの設計としては、以下が検出・同定可能。また、これ以外の寄生蠕虫についても検出トライアルが実施可能です。ご相談ください。
・幼虫移行症:顎口虫、シュードテラノバ/アニサキス、旋尾線虫、動物由来回虫・鉤虫・糸状虫、さらに線虫以外でも、宮崎肺吸虫、マンソン裂頭条虫、エキノコックスなど
・成虫移行による症状:回旋糸状虫(オンコセルカ腫瘤)、広東住血線虫(好酸球性髄膜脳炎)、ロア糸状虫(眼球結膜移行)、旋毛虫(眼瞼浮腫・筋肉痛)など。



その他の寄生虫検査情報

熱帯病治療薬研究班

国内未承認薬による治療の相談

熱帯地域からの帰国者などに見られる輸入感染症の治療薬には、国内未承認薬が少なくありません。このような薬剤の入手、治療をサポートするために、熱帯病治療薬研究班ではオーファンドラッグ中央保管機関を定め、臨床試験用薬剤として、重症マラリアに使用されるグルコン酸キニーネやトキソプラズマ症の治療薬スルファジアジン、肝蛭の治療薬トリクラベンダゾールなどを保管しております。

検査・診断・治療の手引き

「寄生虫症薬物治療の手引き.pdf」
「マラリア 診断・治療・予防の手引き.pdf」
「トキソプラズマ症診療の手引き改訂版.pdf」
が、無料で熱帯病治療薬研究班のホームページからダウンロード可能です。

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寄生虫の抗体検査

SRLで実施している抗寄生虫抗体検査は、宮崎大学が担当しています。

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日本寄生虫学会

日本寄生虫学会では、不明寄生虫の同定などの相談をホームページ上で受け付けています。
以下のリンクからご利用ください。

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